事業承継税制を活用するためには、会社の条件に加えて、「誰が引き継ぐのか」という人に関する条件を満たしている必要があります。ここでは、制度を利用する際に重要となる「先代経営者」と「後継者」の要件を、具体的な数字を交えて整理します。
まず、先代経営者の条件です。先代は、事業承継時点で会社の代表者であることが必要です。また、議決権ベースで発行済株式の過半数(50%超)を保有していることが求められます。さらに、後継者以外の親族などと合算した場合でも、先代と後継者で議決権の過半数を確保している体制でなければなりません。年齢について明確な上限はありませんが、実務上は60代後半から70代前半での承継準備が最も多く、「まだ元気だから先送り」という判断が制度活用の機会を失わせるケースも少なくありません。
次に、後継者の条件です。後継者は、株式の贈与または相続の時点で18歳以上であることが必要です。また、承継後は会社の代表者に就任し、議決権の過半数(50%超)を保有することが原則となります。これは、名目上の承継ではなく、実質的に経営を担う人物に制度の恩恵を与えるという考え方に基づいています。
2018年の特例制度では、後継者を最大3人まで指定可能となりました。たとえば兄弟姉妹で会社を引き継ぐ場合でも、それぞれが代表者となり、合計で議決権の過半数を保有していれば制度の対象となります。ただし、各後継者が原則として10%以上の議決権を持つことが必要であり、単なる名義参加は認められません。
なお、後継者が親族である必要はなく、従業員承継や第三者承継でも利用可能です。年齢の上限も設けられていないため、「若すぎる」「血縁でない」といった理由だけで制度が使えないことはありません。重要なのは、誰が責任を持って経営を継続するのかが明確であることです。
次回は、制度を利用した後に必ず関わってくる「5年間の縛り」と、6年目以降に何が変わるのかを解説します。
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