事前確定届け出給与とはその③ 在職老齢年金の改定2024

2024.3.5

 
今回は、2024年度から在職老齢年金の支給停止調整額の変更について解説します。
 
2024119日に厚生労働省がプレスリリースを出しました。
タイトル
令和6年度の年金額改定についてお知らせします
~年金額は前年度から 2.7%の引上げです~
その理由は、以下の通りです。
総務省から、本日(1月 19 日)、「令和5年平均の全国消費者物価指数」(生鮮食品を
含む総合指数)が公表されました。これを踏まえ、令和6年度の年金額は、法律の規定に基づき、令和5年度から 2.7%の引上げとなります。
 
それに伴い、支給停止調整額は、厚生年金保険法第46 条第3項の規定により、名目賃金の変動に応じて改定され、令和6年度の支給停止調整額は以下の通りとなります。
令和5年度           令和6年度
支給停止調整額   48 万円               50 万円
 
ただし注意したいのは、50万円が適用されるのは2024614日支給の年金からということです。2024年度初めての年金支給日である415日は、2月と3月分の年金が対象のため、これまでのルールが適用されます。(公的年金は、後払い)
 
まず、知っておきたいことは、年金を受け取りながら働いて高額な報酬をもらうと、年金の支給額が一部または全部支払われなくなることです。へんてこなルールです。
 
働きながら年金を受け取るので「在職老齢年金」といいます。
 
厚生労働省の説明は、以下の通りです。
「在職老齢年金は、賃金(賞与込み月収:総報酬月額相当額)と年金(老齢厚生年金の基本月額)の合計額が、支給停止調整額を上回る場合には、賃金の増加2に対し年金額を1支給停止する仕組みです。」
 
用語の説明
基本月額
加給年金額を除いた老齢厚生(退職共済)年金(報酬比例部分)の月額
総報酬月額相当額
(その月の標準報酬月額)+(その月以前1年間の標準賞与額の合計)÷12
 
在職老齢年金による調整後の年金支給月額は、以下の計算式で求められます。
基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-50万円)÷2(2024年度より)
 
例えば、基本月額(老齢厚生年金の報酬比例部分)が10万円であれば、総報酬月額相当額が40万円(ボーナスが無ければ月額報酬の額)までなら、支給停止になりません。一方、総報酬月額相当額が60万円以上なら年金の支給は全額停止となります。長年働いて、やっともらえるはずの年金が支給停止となるのはむなしい限りです。
 
個人的には、年金を満額もらうために、支給停止にならないように働き方をセーブするようなことはしたくないですね。高額な報酬をもらっている経営者やお医者さんは、年金が受け取れなくてあきらめています。
 
次回は、そうならないために、事前確定届出給与という制度を利用した「年金復活スキーム」の説明をします。