事前確定届け出給与とはその② 社会保険削減効果

2024.2.20

 
今回は、役員報酬が高額な役員が事前確定届出給与を利用するメリットを解説します。
 
協会けんぽの保険料額表をご存じでしょうか?収入に応じた社会保険料の負担額を一覧にしたものです。
例えば、毎月1,000,000円を役員報酬で受け取っている経営者がいくら社会保険料を負担しているのか計算してみましょう。令和6年、東京都、40歳以上を例にとります。
 
健康保険の等級と標準報酬月額:43等級、980,000円(955,000円~1,005,000円)
健康保険の料率と額:11.58%、合計113,484円(会社と本人負担の折半額56,742円)
 
厚生年金保険料の等級と標準報酬月額:32等級、650,000円(635,000円以上)
厚生年金の料率と額:18.3%、合計118,950円(会社と本人負担の折半額59,475円)
 
社会保険は、健康保険、介護保険(40歳以上)、厚生年金で構成されています。健康保険は、都道府県によって異なり、東京都の場合、9.98%、介護保険は、全国一律で、1.6%です。なので、40歳以上の方は、9.98%+1.6%=11.58%となります。
 
社会保険は、等級が定められ、標準報酬月額に料率をかけることにより計算します。また、労使折半(会社と従業員で折半)で拠出します。
先の例だと年間の負担額は、以下の通りとなります。
56,742円+59,475円)×12ヶ月=1,394,604円となります。会社負担も同額であることをお忘れなく。
 
では、事前確定届出給与を利用し、年に1回の役員賞与として受け取り、月々の報酬を100,000円とした場合は、どうなるのでしょう?
 
月額報酬にかかる健康保険と介護保険は、5,674円、厚生年金は、8,967円で、年間175,692円となります。同額を会社も負担します。
 
次に、賞与ですが、12,000,000円-1,200,000円=10,800,000円となります。
 
賞与にかかる保険料額は一定のルールがあります。
実際の賞与等支給額から1,000円未満を切り捨てた額が標準賞与額となり、健康保険、介護保険、厚生年金保険のそれぞれに上限が設定されています。健康保険・介護保険では年度の標準賞与額の合計が573万を上限(573万円を超える額は573万円とみなす)とし、厚生年金保険では支給ごとに150万円を上限(150万円を超える額は150万円とみなす)となっています。
 
健康保険・介護保険
5,730,000円×11.58%=663,534円、これを折半すると331,767
 
厚生年金
1,500,000円×18.3%=274,500円、これを折半すると137,250
 
ここで、経営者の場合、個人が負担する分も会社が負担する分も同じ「お財布」と考えると折半以前の金額で考える方が妥当ですね。
 
では、事前確定届出給与を利用しなかった場合と利用した場合を比べってみます。
 
利用しなかった場合
(健康保険・介護保険113,484円+厚生年金118,950円)×12ヶ月=2,789,208
 
利用した場合
月額部分:(健康保険・介護保険11,348円+厚生年金17,934円)×12ヶ月=351,384
賞与部分:健康保険・介護保険663,534円+厚生年金274,500円=938,034
合計:351,384円+938,034円=1,289,418円<2,789,208円(利用前)
 
*子ども・子育て拠出金などにも反映されます。また、この例の場合、将来の年金が減少します。
 
事前確定届出給与の利用には、多くの注意点がありますが、社会保険料の削減効果を見ると条件さえ合えば、利用してみたくなりますね。