事前確定届け出給与とはその① 役員も従業員と同じようにボーナスをもらえる?

2024.2.5

 
役員は、役員賞与(ボーナス)をもらう時は、損金不算入となり、従業員と同じように経費として処理できないから、役員賞与を受け取っていない役員は多いですよね。
しかし、「事前確定届出給与に関する届出書」を税務署に提出することで、損金不算入とならずに役員賞与を受け取れます。ここで、届出書の名称は「給与」となっていますが、「賞与(ボーナス)」のように受け取れる制度です。
では、役員報酬にはどのような法人税法上のルールがあるのでしょうか?整理してみましょう。

まず、役員報酬とは、取締役や監査役等の役員に支給する報酬のことをいいます。
役員報酬は従業員に対する給与と違って役員自身が役員報酬を自由に決めることができます。例えば、会社に利益が出そうだから役員報酬を増やして、会社の利益を減らそうといった利益操作もできてしまいます。そのような恣意的な利益操作を防ぐため、役員報酬が損金算入(経費扱い)されるには、一定の要件を満たさなければなりません。条件は、3つです。

①定期同額給与定期同額給与は、通常の給与のイメージで、毎月同じ金額を支払う給与(役員報酬)のことをいいます。事業年度が始まってから3か月以内に決定し、一度決定すると、原則として、その次の事業年度の同じタイミングでないと変更することができません。

②事前確定届出給与事前確定届出給与とは、事業年度が始まってから一定期間以内に、税務署に対して、支給時期と支給額を事前に届出した上で支給する給与(役員報酬)のことをいいます。役員に対して賞与を支給したいときはこの事前確定届出給与を利用できるのです。但し、ルールが極めて厳しく、実際に支給した金額が届出した金額と違う場合は、支払日が一日でも違ったときは、損金算入することができません。その場合、通常の役員賞与と同様、損金算入されず、法人税を支払うこととなります。

③業績連動給与業績連動給与は、インセンティブ給のように利益や株価等の指標を基礎として計算された金額を支給する給与(役員報酬)のことをいいます。なお、この業績連動給与は、上場会社等の有価証券報告書の提出会社でなければ採用することはできません。なので、中小企業においては、忘れてもよい制度です。

さて、事前確定届出給与を利用するのに適した会社(役員)は、どのような会社(役員)なのでしょう。
・業績が安定していて、一年後の決算の数字がある程度見えている会社(金額と支払いタイミングを変更できない為)・役員報酬が高額な役員(所得税・住民税は変わらないが、社会保険料の削減が見込める為)
事前確定届出給与に関する届出書は、顧問税理士にご相談することをお勧めします。
次回は、役員報酬が高額な役員が事前確定届出給与を利用するメリットを解説します。