経営者が把握すべき数字:労働分配率と労働生産性その②

2024.1.20

 
今回は、労働生産性について説明します。最近、「日本の労働生産性は海外と比べて低く、ITの活用などにより労働生産性の向上が望まれる。」というような論調をよく耳にします。
 
では、労働生産性とは何でしょう。経済産業省の定義では「従業員一人当たりの付加価値額」となっています。
 
付加価値額とは、労働分配率の説明でも出てきましたが、「付加価値額=営業利益+給与総額+減価償却費+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課」(日銀方式)となっています。一人でどれだけの付加価値を稼ぎ出したのか、というものです。もちろん、金額が大きいほど、生産性が高いということになります。
 
中小企業においては、ざっくり「粗利益」を付加価値額と言っても良いでしょう。粗利とは、売上から売上原価を差し引いた「売上総利益」のことを言います。「限界利益」と言う場合もあります。
 
付加価値額=限界利益=粗利=売上総利益、となります。
 
次に、「従業員数」ですが、中小企業の場合、役員もプラスします。また、パート・アルバイトの方は、労働時間によって、「このパートは、0.5人分だ」とかフルタイムの従業員に換算して従業員数に加えます。
 
以上の計算で算定した労働生産性の数字をどのように評価したらよいのでしょう。二つの評価の仕方があります。一つ目は、同業他社と比較することです。二つ目は、自社の時系列での比較です。
 
労働生産性の数字は、大企業の製造業と非製造業、中小企業の製造業と非製造業、また、業種別でも公表されています。しかし、概ね、大企業では1,200万円、中小企業では700万円を一つの目安とすると良いでしょう。
 
では、どのようにしたら労働生産性は向上するのでしょうか。まず、粗利を上げることが必要です。それには、商品・サービスの値上げ、原価の削減などが考えられます。次に、従業員数を少なくすることが考えられます。それには、ITの導入を検討できないかなど考えます。
 
経営者目線では、どうでしょう。自社の持つ強みをより強化できないだろうか、採算の低い事業を止めることはできないだろうか、社員が効率的に仕事できる組織や環境を作ることはできないだろうか、などと考えます。
 
経営者として課題を発見する一つの手法が、以前にご紹介したSWOT分析です。内部環境の強み(S)と弱み(W)、外部環境の機会(O)と脅威(T)を分析することによって生産性向上のヒントが得られます。是非、活用してみてください。