KPI(重要業績評価指標)とは?②一人当たりの付加価値額

2024.11.20

 
前回、KPIの必要性とモニタリングの重要性について説明しました。では、中小企業においては、どのような指標をKPIとするのが良いのでしょう。中小企業でも簡単に計算できるKPIの一つが「一人当たりの付加価値額」です。
 
「一人当たりの付加価値額」とは、企業が生み出す付加価値を従業員一人当たりに換算した指標です。付加価値とは、企業が創出した利益や価値を示す概念で、以下の式で計算されます。
 
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費 + 租税公課
一般の中小企業では、売上から売上原価を差し引いた「売上総利益(粗利)」を付加価値額として使用しても良いです。
 
これを従業員数で割ることで「一人当たりの付加価値額」が求められます:
一人当たりの付加価値額 = 付加価値額 ÷ 従業員数
*正社員は、1人、パートは、0.5人などとして従業員数とします。中小企業においては役員も従業員数に入れましょう。
 
あるサービス業の中小企業を例として一人当たりの付加価値額を計算してみましょう。
(単位:円)
売上                     44,448,695          63,493,556          90,630,471
売上原価              22,501,712          31,221,917          45,164,453
売上総利益           21,946,983          32,271,639          45,466,018
期末従業員数(人)           4.5                       5.0                       6.5
1人当たりの付加価値額
        4,877,107            6,454,327            6,994,772
 
当該企業においては、従業員一人当たりの付加価値額が上昇していっています。生産性が上がったともいうし、稼ぐ力が付いたとも言えます。
 
さて、一人当たりの付加価値額をKPIにするメリットを見ていきましょう。
1,企業の生産性を定量的に把握できる
この指標は、従業員一人ひとりがどれだけの価値を生み出しているかを示します。単純な売上や利益では見えにくい「効率性」や「生産性」を把握でき、組織の健康度を評価するのに役立ちます。
 
2,業種や規模を超えた比較が可能
同業他社や過去の自社との比較がしやすくなり、競争力の向上や改善ポイントの特定に役立ちます。業界の標準値と比較することで、自社の相対的な位置を明確化できます。
 
3,従業員のモチベーション向上
この指標は「自分たちがどれだけの価値を生み出しているか」という実感を従業員に与えることができ、仕事への意欲向上につながります。特に成果を具体的な数字で示すことが従業員の達成感を高めます。
 
4,付加価値向上の戦略が立てやすい
生産性の低い部門やプロセスを特定し、改善に向けた戦略を立案する際の指針となります。たとえば、業務プロセスの効率化、スキル向上の研修、新技術の導入などの具体策を見出せます。
 
5,持続可能な成長を目指せる
企業の成長を支えるのは、従業員一人ひとりがどれだけの価値を生み出せるかにかかっています。一人当たりの付加価値額を高めることは、売上規模の拡大だけではなく、質的な成長の指標としても重要です。
 
6,利益と人材投資のバランスを可視化
従業員数を増やすことで売上は上がるが生産性が下がる、あるいは人件費が過剰になるリスクを防ぐことができます。適切な人材投資と利益確保のバランスを取るための判断材料になります。
 
「一人当たりの付加価値額」をKPIにすることで、企業の生産性や効率性を客観的に測定し、成長戦略の指針を得ることができます。さらに、従業員一人ひとりが生み出す価値に焦点を当てることで、組織全体の改善意欲や競争力向上につながります。この指標は、企業の収益性と人材の活用度を同時に把握できる、非常に有効なKPIです。