ポーターの競争優位性 5つの要因 ラーメン店の場合

2024.10.20

 
2024104日の記事です。
20241-9月のラーメン店の倒産が47件(前年同期比42.4%増)に達し、集計を開始して以降で年間最多の2023年(1-12月)の45件を抜いた。ラーメン店は、食材代や運営コストの高騰に見舞われ、前年同期の4割増のハイペースをたどっている。このペースで推移すると年間60件を超える可能性も出てきた。」
 
そこで、今回は、以前のコラムでご紹介したポーターの「競争優位性の5つの要因(Five Forces)」を用いて、ラーメン店のおかれた立場を分析します。
 
まずは、以下のサマリーをご覧ください。
URL:ラーメン店の競争優位性の5つの要因分析
 
では、一つ一つ見ていきましょう。

  1. 新規参入の脅威
  • ラーメン店の防御策: 飲食業界、特にラーメン店は新規参入が比較的容易です。料理の技術や初期資金の壁が低いため、競合店が続々と出てくる可能性があります。新しいラーメン店が開店すれば、既存の店舗は顧客を奪われるリスクがあります。
    • 対策: 独自のラーメンメニューや地域に特化した味、サービスを提供し、他店との差別化を図ります。例えば、地域の食材を使ったオリジナルのスープや特別なトッピングを作ることで、他店との違いを打ち出します。また、SNSや口コミを活用したマーケティングで、既存顧客との強い関係を築くことも重要です。
  1. 代替品の脅威
  • 代替品の例: ラーメン店にとって代替品の脅威には、他の料理ジャンル(例えば、ファストフード、寿司、カレーなど)が考えられます。特にラーメンがヘルシーでないと考えられている場合、より健康的な選択肢(サラダやビーガンフード)に顧客が流れる可能性があります。
    • 対策: ヘルシーなメニューやビーガンオプション、グルテンフリー麺などを提供することで、代替品に対抗できます。また、味にこだわる顧客に対しては独自の味の追求や品質の向上を図り、ラーメンが「選ばれる一品」になるよう工夫します。
  1. 既存競合との競争の強さ
  • 競争の激しさ: ラーメン業界は競争が非常に激しい業界です。特に都市部では、数多くのラーメン店が密集しており、顧客は味、価格、雰囲気、サービスなど多様な要因で店舗を選びます。人気のラーメンチェーンや評判の店が近くにあれば、集客に苦労する可能性があります。
    • 対策: 商品の差別化を行い、顧客に「ここでしか食べられない体験」を提供します。例えば、ユニークなラーメンのトッピング、店内の雰囲気づくり、個性ある接客など、他店が真似できない独自の価値を作り出します。また、地元のイベントやフェスティバルに参加し、ブランド認知度を高めるのも効果的です。
  1. 買い手の交渉力
  • 顧客の交渉力: ラーメンの価格や味に対して、顧客は敏感です。安価な選択肢や高品質の競合があると、顧客は簡単に他店に流れてしまうため、顧客の交渉力は強いと言えます。特にインターネットの口コミやSNSでの評価が購買行動に大きく影響する現代では、顧客の声が重要です。
    • 対策: 価格競争に陥るのではなく、価格以上の価値を提供することが重要です。例えば、スープの素材にこだわったり、接客を向上させたりすることで、顧客が満足する体験を提供します。また、リピーターを増やすためにポイントカードや会員限定サービスを導入し、顧客を固定化します。
  1. 売り手の交渉力
  • 原材料供給者の影響: ラーメン店にとって、スープの材料や麺、肉、野菜などの原材料の仕入れがコスト構造に大きく影響します。特に特殊な食材や高品質な材料を使用している場合、供給者の交渉力が強くなる可能性があります。また、季節や市場の変動によって価格が上がることも考えられます。
    • 対策: 長期的なパートナーシップを供給者と築き、安定した価格と品質の食材を確保する戦略が有効です。また、複数の供給者から仕入れることで、供給リスクを分散させます。地元の生産者と提携することで、地域特産品を利用した差別化を図り、同時にコストもコントロールすることができます。

まとめ
ラーメン店がポーターの5つの要因に基づいて戦略を立てる際は、競争激しい市場で差別化を図ることが重要です。味やサービスの質を高め、顧客との信頼関係を強化しつつ、価格競争に陥らないように工夫することが成功への鍵となります。また、供給者との関係や新規参入者への対策も考慮に入れることで、競争優位を築けるでしょう。

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