経営者が把握すべき数字:労働分配率と労働生産性その①

2024.1.5

 
最近、人材を採用するのに苦労しているという経営者は多いのではないでしょうか。物価高の中、最低賃金が上昇し、社員の給料を上げなくてはと思っている経営者も多いと思います。
 
労働分配率と労働生産性を知っておくことにより、計画的に人材採用や賃上げを行うことができるのです。
 
まず、労働分配率を見ていきましょう。
経済産業省の企業活動基本調査においては、労働分配率を以下のように定義されています。
「労働分配率とは、付加価値額に対しての人件費を示す指標であり、企業が新たに生み出した価値のうちどれだけ人件費に分配されたかを示す指標。ここでは、次の算出方法による。
労働分配率=給与総額÷付加価値額×100」とあります。
 
また、付加価値額とは、「付加価値額=営業利益+給与総額+減価償却費+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課」(日銀方式)となっています。
 
一般的に、中小企業においては、ざっくり「粗利益」を付加価値額と言っても良いでしょう。粗利益は「あらりえき」又は「そりえき」と読みます。短く「粗利(あらり)」と言うことが多いです。
 
粗利とは、売上から売上原価を差し引いた「売上総利益」のことを言います。例えば、1億円の売上を上げるのに、いくらコストが掛かったのか、原価(仕入れや製造原価)はいくらなのか、考えてみましょう。売上原価が5,000万円であれば、粗利は、5,000万円。売上原価が8,000万円であれば粗利は2,000万円です。
 
いくら売上が大きくても、仕入れにコストが掛かっていたのでは、利益は出ませんよね。会社を黒字に導くには、売上の規模よりも粗利の大きさを見るべきなのです。
 
さて、労働分配率とは、平たく言うと「儲け(粗利)」からいくら従業員に支払っているのかと言う比率です。「給与総額」には、賞与、福利厚生費、法定福利費(社会保険料、労働保険料)など従業員にかかるすべてのコストを計算に入れます。
 
では、労働分配率は、いくらが適正なのでしょう?給料が高ければ社員のモチベーションは高まりますが、払いすぎると利益が残らなくなってしまします。適正な水準を知ることによって、おおよその見当は付けられると思います。以下は、業種別の労働分配率です。
製造業    51.0%、卸売業     49.7%、小売業     49.4%、飲食サービス業 74.9%
生活関連サービス業、娯楽業 72.9%、電気・ガス業  22.3%
 
さて、同業者と比べて労働分配率が高ければ多くのお給料を出しているかと言うとそうではありません。そもそも粗利が小さければ分配される絶対額は少なくなります。労働分配率の逆が、労働生産性になります。労働生産性とは、従業員一人当たりいくらの粗利を生み出しているのかという指標です。
 
最近、日本の企業の生産性の低さが議論されることが多くなりました。労働分配率が同じでも生産性が向上し粗利が大きくなれば、多くのお給料を従業員に払うことができるのです。
 
次回は、労働生産性について解説し、具体的な事例も見ていきましょう。