事業承継税制は、「税金を払わなくてよい状態が続く制度」と誤解されがちですが、正確には納税を猶予している制度です。つまり、一定の条件を満たし続けてはじめて、最終的に税金の支払い義務が消滅し、制度が“完了”します。この「完了する条件」を正しく理解することは、制度を安心して活用するうえで欠かせません。
まず、最も代表的な完了パターンが、後継者が亡くなった場合です。後継者の死亡により、猶予されていた相続税・贈与税は全額免除されます。これは、制度が「後継者一代で事業を継続できれば目的は達成された」と考える設計になっているためです。実務上も、このケースが最終的な完了条件として想定されることが多くなっています。
次に重要なのが、会社が継続して存続し、制度上の要件を満たし続けていることです。承継後5年間の事業継続要件をクリアし、その後も代表者であること、株式を保有していること、定期的な報告書を提出していることが維持されていれば、納税猶予は継続します。そして、後継者が亡くなった時点で、猶予されていた税額は免除へと切り替わります。逆に言えば、「完了するまで制度は続く」という長期的な視点が必要です。
一方で、制度が完了せず、途中で終了してしまうケースもあります。たとえば、後継者が代表者を辞任した場合や、納税猶予の対象となっている株式を売却・譲渡した場合、あるいは会社を解散した場合などです。このようなケースでは、猶予されていた税金が確定し、利子税とともに納付を求められる可能性があります。制度は強力ですが、その分「出口」を誤ると大きな負担が発生する点には注意が必要です。
また、見落とされがちなのが、報告義務を怠った場合です。実態として事業を継続していても、定期的な報告書の提出がなされていない場合、形式的な理由で納税猶予が取り消されるリスクがあります。制度が完了するまで、税務・事務面の管理を継続することが不可欠です。
このように、事業承継税制の「完了」とは、短期間で訪れるものではありません。後継者が責任を持って経営を続け、制度上のルールを守り続けた先に、はじめて免除というゴールがあります。事業承継税制は、単なる節税策ではなく、事業を未来へつなぐための長期的な制度であることを理解したうえで活用することが重要です。
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