「3C分析」という言葉を聞くと、マーケティングの教科書を思い浮かべる人が多いでしょう。しかし、現場で経営者と向き合うとき、これは“分析”というよりも“対話のためのフレーム”として使う方が効果的です。
3Cとは、Customer(顧客)、Competitor(競合)、Company(自社)。経営者の頭の中には、日々の現場感覚や意思決定の理由が混在しています。
コンサルタントが3Cの切り口で質問を投げかけることで、その思考を整理し、言語化を促すことができるのです。
たとえば、最初のヒアリングでは、数字や業績の前にこう聞いてみましょう。
「お客様はどんな方が多いですか?」
「近所に似たようなお店はありますか?」
「御社のこだわりはどんな点ですか?」
この3つの質問で、自然にC→C→C(顧客→競合→自社)の順に話が進みます。
経営者が“考えてはいるけれど整理されていない領域”を引き出すのに、とても効果的です。
あるラーメン店の事例では、社長に「お客様はどんな方ですか?」と聞くと、「近くの会社員と学生さんですね」と返ってきました。
続いて「競合はどんなお店ですか?」と尋ねると、「チェーン店が多いけど、味では負けない」と語ります。
最後に「自分の店の強みは?」と問うと、「スープと常連さんとの関係」と、経営の軸が明確になってきました。
こうして話すうちに、社長自身が“自分の店の価値”を再認識し、次の行動を考え始めるのです。3C分析を使う目的は、経営者を評価することではありません。「この社長は、どんな世界で戦っているのか」を理解するための鏡です。数値分析よりも、まず経営者の言葉の中から市場・競合・自社の構図を描く。それが信頼関係づくりの第一歩になります。
次回は、3Cの中でも特に奥深い「Competitor(競合)」の扱い方を取り上げます。
競合を語れる社長は強い。では、語れない社長にはどう寄り添えばよいのか。現場で役立つヒントをお伝えします。
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