前回のコラムで、事業承継税制はメリットの大きい制度であることがお分かりいただいたと思います。しかし、利用できるには各種条件があります。まずは、会社の条件を見ていきましょう。
事業承継税制の正式名称は、「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予および免除の特例」といいます。名前からも分かるように、対象となるのは「非上場会社の株式」であり、この制度は、日本の中小企業の事業承継を支援するために設計されたものです。しかし、すべての会社が自由に使えるわけではありません。まず押さえるべきは、「会社側にどのような条件が求められるか」というポイントです。
第一に、会社が「中小企業」であることが大前提になります。中小企業基本法に基づく資本金や従業員数の基準を満たしていることが必要で、規模が大きく、実質的に大企業とみなされる会社は対象外となります。これは、制度の目的があくまで“地域経済を支える中小企業の存続支援”にあるためです。
中小企業基本法による中小企業の定義
https://www.chusho.meti.go.jp/soshiki/teigi.html
分かりにくいですが、資本金の額と常時使用する従業員の数で決まります。「又は」とありますので、業種にかかわらず、資本金が5,000万円以下であれば「中小企業」となります。
次に、会社が「上場していないこと(非上場会社であること)」が必須です。上場企業の場合、株式の市場価値が自由に形成されるため、納税猶予を認める必要性が低いという考え方によります。
三つ目の条件は、資産管理会社でないことです。資産管理会社とは、不動産管理や株式運用などが主な業務で、本来の「事業」よりも資産保有が目的になっている会社を指します。このタイプの会社は、事業継続のための税制とは趣旨が異なるため、原則として制度の対象外とされます。ただし、一定割合以上の事業収入があれば対象になるケースもあり、判断には専門家の確認が必要です。
最後に重要なのが、事前に“事業承継計画”を提出していることです。これは単に書類を出すだけではなく、会社が今後どのように事業を継続し、誰が後継者として経営を担っていくのかを明確に示す工程表を作るという意味を持っています。この計画が提出されていなければ、そもそも制度の入り口に立つことができません。
以上のとおり、事業承継税制を使うためには、会社側にも明確な条件があります。次回は、この制度を「使える人」、つまり先代経営者と後継者に求められる要件について解説します。
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