貸借対照表の重要な勘定科目 利益剰余金の見方②
2023.10.05
利益剰余金は、最初にチェックすべき勘定科目と説明を行いました。
復習すると、「利益剰余金は、企業の財務状況を理解するために非常に重要な要素の 1つです。利益剰余金は、企業が過去の利益をどのように処理し、資本構造をどのように維持または成長させてきたかを示す指標となります。」と定義されます。
ここで、ある会社の純資産の部を見てみましょう。
【株主資本】
資本金 3,000,000
利益剰余金 -4,770,560
純資産の部合計 -1,770,560
如何でしょうか?この会社は、大丈夫ですか?
純資産の部が、マイナスということは、いわゆる「債務超過」ということになります。但し、「債務超過だから倒産する」と考えるのは間違いです。債務超過であっても生き残っている企業は、すごく多いです。倒産するのは、支払いができない状態なので、会社オーナーが資産家で会社に貸し付けたりできれば、倒産しないですね。銀行も、最近では、債務超過だからお金を貸せないという態度ではなく、会社を総合的に判断します。
全国経営診断士協会の会員が利用できる「 MTチャート ®」で当該企業を分析してみましょう。
こちらのチャート(サービス業用)をご覧ください。
MTチャート ®から見えることは、以下の通りです。
・債務超過であるがゆえに、固定比率と自己資本比率は、ゼロ点
・売上高伸び率、限界利益率から構成される成長力は、高い
・店舗設備が必要ない事業なので店舗施設装備額は、低くて当然
・短期の支払能力である当座比率は、高い
・収益力は、現時点では、かなり低い
この企業が取り組んでいる事業の成長が継続する場合の 3年後の「未来の MTチャート ®」は、以下の通りとなりました。
如何でしょうか?
3年後は、債務超過ではありません。店舗の要らない事業なので店舗施設装備額はゼロで良いのです。その他の指標は、ある意味「理想的」といえる内容となっています。
利益剰余金が、マイナスであることは、過去の業績の蓄積がマイナスであったことを意味しますが、成長途上の会社には、「よくあること」と言っても良いと思います。
次回は、利益剰余金が過大な企業の事例を見ていきます。